原材料費の値上げに伴う価格転嫁交渉をほぼすべての顧客で実現
B社(金属切削加工業)
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・エネルギー費・人件費
交渉手法
データ提示型・関係構築型
活用ツール・支援機関
エネルギー費推移データ・値上げ通告書・金属市場価格・税理士・中小企業診断士
定量的な成果
顧客の約6割が希望通りの転嫁を受諾。転注は売上の数%に留まる
当時の課題
- 鉄関連素材の価格が4〜5年前から急騰。
- 銅の価格は6年前に比べ3倍に上昇。
- 労務費も過去には認められにくかったが上昇が続く。
取組概要
- 電力などのエネルギー費の推移データ、原材料供給先の値上げ通告、金属類の市場価格などの証拠書類を準備。
- 社長自ら顧客に正直に経営状態を話し、価格転嫁を依頼。
- 税理士と中小企業診断士、銀行に財務面のチェックも依頼し「企業の人間ドック」として経営の健康状態を把握した上で交渉に臨んだ。
成果概要
- ほぼすべての顧客で価格転嫁を実現。
- 全体の6割は希望通り、残りは減額された金額での転嫁。
- 転注は売上の数%に留まり、経営への影響は軽微。
副次効果
経営の健康状態を定期的にチェックする仕組みの構築
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
金属切削加工業で、原材料費・エネルギー費・労務費の三重苦に直面しているが、「値上げを言ったら仕事を失うのではないか」と交渉に踏み切れない経営者に読んでほしい事例です。社長自ら正直に経営状態を話すという姿勢が、ほぼすべての顧客での転嫁実現につながりました。
「企業の人間ドック」という表現が象徴的です。税理士・中小企業診断士・銀行に財務面のチェックを依頼してから交渉に臨むことで、「値上げしなければ事業が継続できない」という主張に客観的な裏付けが加わります。自社の経営状態を第三者に検証してもらうことは、交渉相手にとっても「この会社は本当に困っている」という判断材料になります。
証拠書類の準備が徹底されている点も注目に値します。電力などのエネルギー費推移、原材料供給先の値上げ通告、金属類の市場価格——いずれも自社で作成した数字ではなく、外部の客観的データです。「うちの都合で上げたいのではなく、市場がこう動いている」という説明は、相手の調達担当者が社内で承認を取る際の根拠としても使いやすい構成です。
転注が売上の数%に留まったという結果は、価格転嫁に踏み切れない経営者に伝えたい重要なデータです。「値上げしたら全部逃げられる」という恐怖は、多くの場合、実態より大きく見積もられています。6割が希望通り、残りは減額での転嫁という結果も現実的です。100%の転嫁でなくても、交渉すること自体が経営改善の第一歩になります。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →