製造業・金属・非鉄金属 データ提示型 No.112

年間1.5億円の赤字から黒字に転換。原価管理の徹底が価格転嫁の準備に

C社(アルミ押出成形)

この事例のポイント

コスト上昇要因

原材料費・人件費・エネルギー費・物流費

交渉手法

データ提示型

活用ツール・支援機関

1kgあたりのコスト要素別金額推移データ

定量的な成果

年間赤字1.5億円→黒字1.8億円。赤字製品比率60%→24%。顧客の97%で転嫁実現。価格転嫁の利益増大への貢献度は約50%

原価管理赤字脱却1kgあたりコスト分析段階的実施

出典より

愛知県「取引適正化・価格転嫁事例集」2026年2月 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • 7期連続の赤字で年間1.5億円の赤字。
  • 入社時に原価管理がまったくできておらず、どの製品で利益が出てどの製品が赤字なのかわからない状態だった。

取組概要

  • まずすべての製品について「何にいくらかかっているのか」を明らかにする作業に着手。
  • 原料費、人件費、資材費、電気代、機械設備の補修費、運送費などコストを構成するすべての要素について1kgあたりの金額推移データを示して価格転嫁を依頼。
  • 2021〜2024年にかけて段階的に実施。
  • すべてのデータを顧客に公開し、調達担当者が稟議書を書きやすい配慮も実施。

成果概要

  • 97%の顧客で価格転嫁を実現。
  • 年間1億5000万円の赤字から1億8000万円の黒字に転換。
  • 赤字製品比率が60%から24%に改善。
  • 出荷量は従来の80%程度に減少したが利益は大きく向上。

副次効果

原価管理体制の構築、電気代の節約や生産性向上などの取組みも並行実施

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

製造業で長期間の赤字が続いているが、「どの製品が赤字なのかすら分からない」という状態にある経営者に読んでほしい事例です。7期連続・年間1.5億円の赤字から黒字1.8億円への転換は、価格転嫁だけでなく原価管理の徹底が土台になっています。

「何にいくらかかっているのか」を明らかにする作業に最初に着手したという順序が重要です。原価が見えていない状態では、そもそも「いくら上げてほしいのか」を自分自身で説明できません。1kgあたりのコスト要素別金額推移データという形で可視化したことで、「なぜこの金額を請求するのか」に対して具体的な根拠を示せるようになっています。

顧客の97%で転嫁を実現できた背景には、「調達担当者が稟議書を書きやすい配慮」があります。すべてのデータを顧客に公開するという判断は勇気がいりますが、発注側にとっては「このデータをそのまま稟議に添付できる」という実務的なメリットになります。交渉は「相手が社内を説得できる材料を渡す」ことでもあります。

出荷量が従来の80%程度に減少したにもかかわらず利益が大きく向上した点は、「量を追って赤字を積み上げる」経営からの転換を示しています。赤字製品比率が60%から24%に改善したということは、以前は6割の製品が売れば売るほど損をしていたことになります。価格転嫁の前に、まず自社の原価を知ること——この順序を間違えると、交渉の根拠が曖昧なまま値上げを「お願い」するだけになります。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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