製造業・食品 データ提示型 関係構築型 No.116

日ごろのビジネスで培った信頼関係が80〜90%の顧客での価格転嫁を実現

G社(食品加工用食品添加物・食品素材全般の開発、販売、加工)

この事例のポイント

コスト上昇要因

原材料費・人件費

交渉手法

データ提示型・関係構築型

活用ツール・支援機関

為替データ・財務省輸入統計・原材料価格推移資料

定量的な成果

取引顧客の80〜90%で転嫁実現

信頼関係為替データ食品業界輸入原材料

出典より

愛知県「取引適正化・価格転嫁事例集」2026年2月 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • 為替変動と天候不順による不作が価格上昇の主要因。
  • 食品の自給率が低く副原料も輸入品の比率が高い。
  • 円安による仕入価格上昇、天然由来の副原料は不作で供給量が減少し仕入価格が上昇。
  • 国産副原料は農業従事者の人口減少も課題。

取組概要

  • 仕入先からの値上げ要請に伴い、為替や財務省輸入統計、原材料価格の推移の資料を用意して交渉。
  • 該当する商品の利益率、過去の販売データ、他社の動向等を考慮して値上げ幅を決定し、上司に報告した上で社内のシステムに登録して共有化。
  • 交渉期間は約1か月〜3〜4か月。

成果概要

  • 取引のあるお客さまの約80%から90%で価格転嫁を実現。
  • 長年培った信頼関係がスムーズな交渉の実現につながった。
  • ただし大手食品メーカー等の調達部のある企業では比較的交渉しやすいが、中小規模でオーナー経営者の場合は交渉が難航するケースもあった。

副次効果

人件費のアップを含めた価格転嫁が今後の課題として明確化

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

食品添加物や食品素材など、為替変動と天候不順の影響を直接受ける業種で、価格転嫁の進め方を模索している経営者に読んでほしい事例です。取引顧客の80〜90%で転嫁を実現した背景にある「日ごろの信頼関係」の具体像が参考になります。

為替データ、財務省輸入統計、原材料価格の推移という三種類の資料を用意している点が堅実です。食品業界では原材料の多くが輸入に依存しているため、為替と輸入統計は説得力のある根拠になります。「なぜ今、値上げが必要なのか」を、自社の都合ではなくマクロ環境の変動として説明できる構造です。

興味深いのは、「大手食品メーカー等の調達部のある企業では比較的交渉しやすいが、中小規模でオーナー経営者の場合は交渉が難航する」という観察です。調達部門がある企業は、コスト上昇を客観的に評価する仕組みを持っています。一方、オーナー経営者は自身の判断で即決するため、「うちも苦しい」という感情的な反応になりやすい。相手の組織構造によって交渉アプローチを変える必要があることを示す実例です。

「人件費のアップを含めた価格転嫁が今後の課題」という点も見逃せません。原材料費やエネルギー費の転嫁は「市場価格が上がった」という客観データで説明しやすい一方、労務費は「自社が賃上げを決めた」という自社都合に見えやすい。労務費の転嫁には、最低賃金の推移や業界の賃金水準といった公的データの活用が有効です。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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