製造業・金属・非鉄金属 データ提示型 No.117

労務費の上昇を根拠に加工料の価格転嫁を実現。技術力と品質管理が追い風に

H社(鉄鋼素材加工(インゴット表面切削・金属加工・試験片製作))

この事例のポイント

コスト上昇要因

人件費・エネルギー費

交渉手法

データ提示型

活用ツール・支援機関

連合・基幹労連の賃上げ情報・仕入先値上げ通知・年間増加費用シミュレーション

加工料労務費技術力品質管理賃上げ情報活用

出典より

愛知県「取引適正化・価格転嫁事例集」2026年2月 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • 加工に用いる金属は顧客から100%支給されるため、請求するのは「加工料」のみ。
  • 労務費の上昇が価格転嫁の最大の理由。
  • 金属加工業はいわゆる3K職場で、給与面でも配慮が必要。

取組概要

  • 連合・基幹労連の賃上げ情報を参考に人件費分の値上げ幅を決定。
  • 資材・機材の仕入先からの値上げ通知をもとに機械設備の消耗分および光熱費等の上昇分を加味。
  • 年間増加費用を算出して月ベースの売価アップをシミュレーション。
  • 顧客の決算期前に約1か月〜6か月程度の交渉期間で契約締結。

成果概要

  • ほとんどのお客さまに納得いただき価格転嫁を成功。
  • 卓越した技術力と徹底した品質管理に対する高い評価が追い風に。
  • 約15年前から値上げ交渉ができるようになった大きな進化。

副次効果

日ごろの業務の質を高めることが価格転嫁交渉を進める土壌をつくると実感

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

金属加工業で、材料は顧客支給のため請求できるのは「加工料」だけ——という構造の中で労務費の転嫁に取り組もうとしている経営者に読んでほしい事例です。加工料しか請求できないからこそ、労務費の根拠を明確にする必要がある好事例です。

連合・基幹労連の賃上げ情報を参考に値上げ幅を決定したという手法は、労務費転嫁の説得力を高める有効なアプローチです。「自社が勝手に決めた額」ではなく、「産業全体の賃上げ水準を反映した額」という位置づけになるため、発注側も「社会的に妥当な水準」として受け止めやすくなります。

年間増加費用を算出して月ベースの売価アップをシミュレーションするという手順も実務的です。「年間でこれだけ増えます」だけでは、相手にとってスケール感が掴みにくい。月ベースに落とし込むことで、「この品番は月○円のアップ」という具体的な数字で交渉できます。顧客の決算期前に交渉を完了させるというタイミング設計も、相手の予算編成に合わせた配慮です。

「卓越した技術力と徹底した品質管理が追い風に」という記述は、価格転嫁における日常業務の重要性を示しています。3K職場と言われる金属加工業で、技術力と品質を維持し続けてきた実績があるからこそ、「この会社には適正な対価を払うべきだ」という判断を発注側に促せます。価格転嫁の交渉力は、日々の仕事の積み重ねの上に成り立ちます。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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