製造業・金属・非鉄金属 データ提示型 関係構築型 No.118

エネルギー費・材料費・労務費すべての上昇に対し、ほぼ全品番で価格転嫁を実現

I社(メッキ加工業(硬質クロムメッキ、亜鉛メッキ、無電解ニッケルメッキ等))

この事例のポイント

コスト上昇要因

エネルギー費・原材料費・人件費

交渉手法

データ提示型・関係構築型

活用ツール・支援機関

原材料価格推移・電気料金明細・ガス料金明細・値上げ案内文・最低賃金上昇率データ

定量的な成果

ほぼ全品番で転嫁実現。大手は60〜70%の転嫁率

メッキ加工エネルギー費工場見学固定観念の打破

出典より

愛知県「取引適正化・価格転嫁事例集」2026年2月 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • 電気メッキは工程上電気を使わないという選択肢がなく、エネルギー費高騰の影響が直撃。
  • 原材料費、人件費も上昇。
  • 「メッキは安い」「どの会社がやっても同じ」という固定観念が根強く残っていた。

取組概要

  • 2022年2月から主要取引先を中心に交渉開始。
  • 原材料価格の推移、電気料金・ガス料金の明細、原材料仕入先からの値上げ案内文、最低賃金上昇率のデータを用いて説明。
  • 否定的な担当者には工場に来てもらい、実際にメッキの技術やその難しさを見てもらう対応も実施。
  • 公正取引委員会の価格転嫁に関する通達等による社会的な風向きの変化も追い風に。

成果概要

  • ごく一部を除きすべての品番で価格転嫁を実現。
  • ただし大手では転嫁率60〜70%。
  • 企業規模が大きい発注者ほど転嫁率は低い傾向。
  • 失注はごくわずかで、一度失った仕事が品質で戻ってきたケースもあり。
  • 収益は改善。

副次効果

取引先とのコミュニケーション活性化、パートナーシップの構築

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

メッキ加工業など、工程上エネルギーを使わないという選択肢がない業種で、「どの会社がやっても同じ」という固定観念に苦しんでいる経営者に読んでほしい事例です。工場見学という直接的な方法で固定観念を打破した取り組みが注目に値します。

「メッキは安い」「どの会社がやっても同じ」——この固定観念は、発注側の調達担当者がメッキの技術や工程を実際に見たことがないことに起因しているケースが多いです。否定的な担当者を工場に招いて実際の技術と難しさを見せるというアプローチは、言葉や数字だけでは伝わらない価値を体験させる方法として有効です。

原材料価格の推移、電気料金・ガス料金の明細、値上げ案内文、最低賃金上昇率と、コスト上昇の根拠を多面的に準備している点も堅実です。特に電気メッキは電力消費が工程の本質であり、電気料金の明細はそのまま「製品原価の一部」として可視化できます。エネルギーコストが直接的に製品コストに反映される業種だからこそ、明細の説得力が高まります。

「大手では転嫁率60〜70%」「企業規模が大きい発注者ほど転嫁率は低い」という記述は現実的です。100%の転嫁は理想ですが、特に大手相手では難しい。しかし60〜70%でも転嫁しないよりは大幅に改善します。一度失った仕事が品質で戻ってきたケースがあるという点も、「品質で選ばれている」という事実が交渉の後ろ盾になることを示しています。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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