駄菓子メーカーが内容量減から価格改定へ。卸売業者を一軒一軒訪問して転嫁を実現
K社(菓子製造(駄菓子メーカー))
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・エネルギー費・人件費
交渉手法
関係構築型
活用ツール・支援機関
訪問説明・メール・ファックス
定量的な成果
希望小売価格10円→12円。その後もう一回値上げを実施
当時の課題
- 創業70年超の駄菓子メーカー。
- 5年ほど前から原材料や光熱費、包装資材費等が値上がりし、最低賃金の引上げ等で労務費も上昇。
- 駄菓子は10円のものを20円に上げることが難しく、当初は内容量減・価格据え置きの「実質値上げ」で対応していたが限界に。
取組概要
- 最初は内容量減による実質値上げで対応したが限界を感じ、価格改定に踏み切った。
- 卸売のみなさまを一軒一軒訪問して説明。
- メールやファックスでも価格転嫁の連絡を実施。
- 代表的なスナック菓子メーカーの値上げが社会的理解を深めたことが追い風に。
- 「あのスナック菓子が値上げをしたのなら、当社製品も理解いただけるだろう」と判断し交渉に臨んだ。
成果概要
- 多くの卸売業者が希望を受け入れ。
- 代表的スナック菓子と同額の希望小売価格10円から12円への値上げを実施。
- その後もう一回価格転嫁を実施し、希望小売価格からオープン価格へ転換。
副次効果
内容量減は卸売にとってメリットがないことが判明。価格改定の方が双方にとって望ましいと認識
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
菓子製造業、特に低価格帯の商品を扱うメーカーで、「10円の商品を20円にするわけにはいかない」と価格改定を躊躇している経営者に読んでほしい事例です。内容量減(実質値上げ)から正面からの価格改定へ切り替えた判断の背景が参考になります。
最初に内容量減で対応し、限界を感じて価格改定に踏み切ったという順序は、多くの食品メーカーが通る道です。内容量減は消費者への告知が不要な分、心理的ハードルが低い。しかしこの事例では、「内容量減は卸売にとってメリットがない」という発見がありました。内容量が減ると棚割りやPOPの変更が必要になり、卸売側にコストが発生します。むしろ価格改定の方が双方にとってシンプルだという判断です。
「あのスナック菓子が値上げをしたのなら、当社製品も理解いただけるだろう」——大手メーカーの値上げを社会的な追い風として活用する判断は合理的です。業界のリーダー企業が値上げに踏み切ると、それが「この業界では値上げが必要な状況」という共通認識を形成します。この追い風のタイミングを逃さないことが重要です。
卸売業者を一軒一軒訪問して説明したという地道な手法も、駄菓子業界の取引構造を反映しています。大手流通との取引なら本部一括交渉が可能ですが、地場の卸売業者が多い場合は個別訪問が避けられません。10円から12円への改定はわずか2円ですが、率にすれば20%です。この「小さな金額だが大きな率」という構造を理解した上で、丁寧に説明する姿勢が多くの卸売業者の理解につながっています。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →