製造業・食品 付加価値型 No.54
原価の増加分を新商品価格に反映して価格転嫁を実現
I社(食料品製造業(福井県))
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費
交渉手法
付加価値型
活用ツール・支援機関
新商品投入
新商品投入値上げ感軽減
当時の課題
- 原材料費の高騰により既存商品の利益率が低下。
- 既存商品の単純な値上げでは顧客離れが懸念された。
取組概要
- 既存商品の値上げではなく、新商品の投入時に原価増加分を反映させる戦略を採用。
- 新たな商品価値を創出しつつ、適正な利益を確保する価格設定を行った。
成果概要
- 新商品の価格に原価上昇分を織り込むことで、顧客に値上げ感を与えずに実質的な価格転嫁を実現。
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
食品製造業で、原材料費の高騰に直面しているが既存商品の値上げで顧客が離れることを恐れている経営者に、読んでほしい事例です。「既存商品は据え置き、新商品投入時に原価上昇分を反映させる」という戦略が、顧客に値上げ感を与えずに実質的な価格転嫁を実現しました。
この事例の核心は、「値上げ」と「新商品発売」を同時に見せないことで、顧客の心理的な抵抗を下げた点です。既存商品のパッケージや名前を変えずに価格だけ上げると、顧客は「値上げされた」と直感的に感じます。しかし新商品として登場する商品の価格は、比較対象がないため「これが定価」として受け入れられやすくなります。顧客の受け取り方の設計も、価格転嫁戦略の一部です。
新たな商品価値を創出しつつ適正な利益を確保するという方向性は、商品開発の負荷を伴いますが、その投資が「値上げ感なしの転嫁」という効果を生み出します。原材料費の上昇を「製品刷新のきっかけ」として捉えることで、コスト増という制約が新たな商品開発の動機になります。
この手法が有効な前提条件は、自社に商品開発の力があることです。価格転嫁の手段は業種・事業特性によって異なります。直接値上げが難しい場合に、新商品導入という迂回路を使う——この柔軟な発想が、顧客関係を守りながらの価格転嫁を可能にしました。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →