サービス業・ビルメンテナンス データ提示型 制度活用型 No.57

最低賃金上昇を根拠とした労務費転嫁交渉

非公開(ビルメンテナンス)

この事例のポイント

コスト上昇要因

人件費・労務費

交渉手法

データ提示型・制度活用型

活用ツール・支援機関

公正取引委員会指針・最低賃金データ

労務費指針最低賃金発注者名公表

出典より

公正取引委員会「労務費転嫁指針」改正版 2025 ↗

※ 本事例は出典をもとに編集・再構成しています。社名はイニシャル表記にしています。

当時の課題

  • 最低賃金の継続的な引き上げにより人件費が大幅に上昇。
  • ビルメンテナンス業は労務費率が高く、発注元への転嫁が事業継続の生命線。

取組概要

  • 公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を活用。
  • 最低賃金の上昇率と自社の労務費構成比を明示した資料を作成し、発注元企業に対して書面による正式な価格交渉を申し入れた。
  • 労務費転嫁率が中央値30%と低い業界の現状も提示。

成果概要

  • 労務費の転嫁率が業界平均で改善傾向。
  • 公正取引委員会が転嫁に応じない発注者名を公表する制度が交渉の後押しとなった。

副次効果

従業員の賃金水準改善

森岡誠

森岡誠の解説

価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー

ビルメンテナンス・清掃業で、最低賃金の継続的な引き上げにより人件費が上昇しているが、労務費の転嫁が進まない状況に直面している経営者に読んでほしい事例です。公正取引委員会の指針という「公的な後ろ盾」を活用した交渉が、業界全体の改善につながった事例です。

ビルメンテナンス業の「労務費転嫁率が中央値30%」という数字を相手に提示することは、強力な交渉材料です。「業界全体でこれだけ転嫁されていない状況だからこそ、正式に申し入れる」という論拠は、感情的な値上げ要求ではなく、業界の構造的問題の是正という大義を帯びます。

公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を活用した点は、特に学ぶべき制度活用の事例です。この指針は「発注者は労務費の転嫁要請を受け付けることが求められる」という趣旨を持ちます。「指針があるにもかかわらず転嫁に応じない」という状況は、発注者側にとって法令遵守上のリスクになります。この非対称な立場を正確に理解した上で申し入れることが、交渉力を高めます。

転嫁に応じない発注者名が公正取引委員会によって公表される制度(社名公表制度)が交渉の後押しになったことも注目です。罰則ではなく公表という制裁が、発注側の行動変容を促しています。制度の抑止力を理解した上で、書面による正式な申し入れを行うことが、この戦略の要です。

※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →

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