レベルマネジメントと地域ブランディングで100%価格転嫁を達成
T社(宿泊業・飲食サービス業(兵庫県神戸市有馬温泉・従業員80名・創業1191年))
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費・エネルギー・光熱費・物流費・運賃
交渉手法
付加価値型・データ提示型
活用ツール・支援機関
近畿経済産業局
定量的な成果
転嫁率100%(原材料・輸送・エネルギー全て)
当時の課題
- インバウンド増加による宿泊業全体の価格高騰機運。
- 原材料費・輸送費・エネルギー費の上昇。
取組概要
- レベルマネジメント(曜日・時期による価格変動)を活用した慎重な値上げ。
- 同じ温泉内の他社の宿泊費情報を収集し値付け。
- 地域ぐるみのまちづくり・ブランド化で1980年代から取組。
- 介護対応客室・外国人スタッフ育成等で付加価値向上。
成果概要
- 原材料費・輸送費・エネルギー費とも100%価格転嫁を達成。
- 宿泊施設の平米単価は大阪市内ホテルとほぼ同じ相場に。
副次効果
地域ブランドの確立・インバウンド対応力強化
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
宿泊業で、インバウンド増加や価格高騰の機運を受けて宿泊料金の見直しを検討しているが、どう値付けするべきか悩んでいる経営者に読んでほしい事例です。「地域ぐるみのブランド化」を1980年代から積み重ね、大阪市内ホテルと同水準の価格を実現した長期的な成功モデルです。
この事例の最大の示唆は「価格は一日で変えられないが、ブランドは何十年で変えられる」という現実です。地域ぐるみのまちづくり・ブランド化という長年の取り組みが、インバウンド増加という追い風の時代に「都市部と同じ価格で泊まれる場所」というポジションを可能にしました。日々の価格交渉以前に、「なぜここに泊まる価値があるか」というブランドを構築することが、長期的な価格決定権を生みます。
レベルマネジメント(曜日・時期による価格変動)の活用も、宿泊業の収益最適化において重要な手法です。需要が高い時期・曜日は高く、低い時期は手頃な価格にすることで、価格弾力性を活かした収益最大化が可能になります。「一律価格」から「需要連動型価格」への移行は、総収益を改善する強力な戦略です。
介護対応客室・外国人スタッフ育成という、需要の多様化への対応も価格維持に貢献しています。多様なニーズに対応できる施設は、「ここでしか叶わない体験」を提供でき、それが価格の正当性を裏付けます。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →