農業・トマト栽培 関係構築型 事業転換型 No.40
段階的な価格改定と販路の最適化で収益を確保
M社(トマト栽培)
この事例のポイント
コスト上昇要因
原材料費
交渉手法
関係構築型・事業転換型
活用ツール・支援機関
段階的改定・販路最適化・EC補助活用
段階的改定販路最適化信頼関係
当時の課題
- 資材費や肥料価格の高騰を受け削減努力だけでは限界を迎え価格改定を決断。
- 収穫量が不安定な生鮮トマトと原価計算が明確な加工品の両面での戦略的な価格策定が必要。
取組概要
- 前年に価格改定に協力いただいた取引先には翌年は自社でコストを吸収するなど柔軟な対応を徹底。
- 取引先との関係に応じた段階的な価格改定を採用。
- 加工品については外注コストの上昇を顧客へ丁寧に説明して適正価格への統一を目指し、生鮮トマトについては自社販売分に利益の幅を持たせ価格許容度の高い顧客への出荷量を調整するなどの管理体制を構築。
- 販売チャネルとして個人向けEC販売を補助的に位置付けし全国の仲卸業者との直接取引を主軸に据えた。
成果概要
- 取引先との信頼関係を維持しながら適正な利益を確保。
- ブランディングに力を入れたことと日頃から助け合いの精神で対応してきたことが信用を高め交渉力につながった。
副次効果
信頼関係維持・ブランディング
森岡誠の解説
価格転嫁・価格交渉の専門家・経営アドバイザー
農業(トマト栽培)で、資材費・肥料価格の高騰と市場価格の不安定さという両面の課題を抱えている経営者に、特に読んでほしい事例です。「前年に協力してもらった取引先には翌年は自社でコストを吸収する」という相互支援の思想が、交渉力の根本にあります。
この事例の核心は、価格転嫁を「取引先との関係に応じて設計する」という個別対応の姿勢です。全取引先に一律で同じ値上げ幅を要求するのではなく、関係性・状況・将来性を勘案した段階的・柔軟なアプローチを採用しました。一時的なコスト吸収を「投資」として取引先との信頼関係を強化し、次の交渉での柔軟性を確保するという長期的な視点が貫かれています。
加工品と生鮮トマトで価格戦略を分けた点も重要です。原価計算が明確な加工品は「適正価格への統一」を目指し、価格変動のある生鮮品は「価格許容度の高い顧客への出荷量調整」で収益を確保しました。商品特性に応じた戦略の使い分けが、全体の収益安定に貢献しています。
「ブランディングに力を入れ、日頃から助け合いの精神で対応してきたことが信用を高め交渉力につながった」という言葉は、価格転嫁の本質を突いています。交渉は交渉の場だけで決まるのではなく、日々の取引姿勢の積み重ねが交渉力の源泉になります。
※ このコメントは森岡誠による独自の解釈・分析です。 著者について →